冨田ラボ@銀座アッポーストア

イベントは15分押しぐらいで開始、スタッフの紹介で白い麻のシャツにべーシュのパンツの冨田さんが登場、「今日はね、まずライブで何曲か聞いてもらって、って感じでやろうと思います」ってなんだか講義みたいですね、先生(笑)。まずはRhodes前に座って、ライブでもやらなかった曲を、と『Pharmacy』。基本的に、トラックはPCからで、Rhodesはちょっと弾くぐらい。でも、生声〜。山本さんを呼んで、冨田さんはベースに持ち替えて『Blue』と『Prayer On The Air』をインストで。「昨日と一昨日でアレンジしました」って、ふふふっとにこやかに言うほど簡単にできることなのか?ステージ後ろにはトラック演奏中のPC画面が出てて、曲の多層構造っぷりの一端を目にする事ができた様な気が。
後半はロキノン兵庫さんとのトーク。「どうして冨田ラボやろうと思ったんですか?」というところからスタート。いい話沢山きけて嬉しかった!忘れないようにメモ。(長いので畳む)
※文体は私の脳内のトミタン(笑)が喋っているものに基づいております。思い出したのを列記しているので、記載の順序は当日の進行と相違があります。大体こんな話してたよなーって覚書き。

  • プロデューサーとかアレンジャーの人がソロ出すケースは、「ほんとはこういう風にやりたいのに!」ってストレスを解消する為というイメージがあるけど、冨田さんは(好きにやってて)あんまりそういうストレスがなさそうだから、ソロは意外でした。→若い頃は、そういうストレスもあった。こういう言い方は横柄かもしれないけど、「曲の為に仕事をしよう」と決めてからは、そういうことはない。アーティストとか曲の為に、まず僕が役に立てるかな?って考えて、できそうだったら(仕事を)受けて、あとは曲のために何がベストかを考えてく。周りはねぇ、説得する。そうやってやってる内に、好きなように(仕事が)できるようになったから、あんまりストレスはない。
  • 学生のころにやっていたバンドでも、自分が歌ってたわけじゃないから、バンドのボーカルがいて、その人が歌って映えるようにと思って曲をつくってたし。
  • でも、そういう制約の無いところで作品を作るっていうのをやってないなぁということに30半ばにして気づいたのね。
  • 曲はどうやってつくるんですか?パッと浮かんだりすることもあるんですか?→うーん、♪タラララ〜みたいなのが浮かんで、ってのは殆ど無い。けど、そういうのが出てきた時はICレコーダーに「♪タラララ〜Am7、タララララ〜 5小節休み〜」とかって入れとく。昔はこれを留守電でやってたことがあります。コードも一緒に入れとかないと、雰囲気が分かんなくなっちゃうんだよねー。
  • まず、最初に曲のイメージを決めるのね。で、どうしてこういう曲が今自分にかかれなきゃいけないのか?って事を考える。
  • イメージってのはどんな感じなんですか?"明るい"とか"暗い"とかじゃないんですよね?→んー、そういうのではないね。
  • 例えば、眠りの森の場合は?→この曲は前のアルバムを作っている時の殆ど最後の方で作った曲だから、そうするとこういうタイプの曲がもうちょっとほしいな、とか、僕のわりと得意なメロウな感じでもうちょっと盛り上がる感じのをいれようかなとか、アルバムの構成を考えるよね。ほんとはすごく良く覚えてて、(1枚目のアルバムに)歌ものの最後から2番目にできた曲なんだって、細かいね。
  • 1曲に入ってる情報量があるレベルに達した時点で完成するんだよ。それは音数が多いって事じゃなくて…。うーん、例えば、ソウルっぽいのの中にビートルズの『○○(曲名忘れた)』見たいなメロディが上手く収まってる、ってかんじのを作ろうと思って、それがAだとすると、Bではそれを刻んで、盛りあげて、とか、サビはメロディーはそのまま素直に行くんだけど、コードは展開してったほうが良いかなとか考えて、まず1コーラス作ってみるんだよ。そうすると、Bのところはいいかなと思ったけど、イマイチとかそうやって手を加えていく。
  • それって、1曲で5曲分ぐらいのことをやってるって感じですね。冨田さんの曲は聴いてると、メロディが沢山あるっていうか…。→ライブの時にミュージシャンの人たちで「1曲が3曲」って言う人がいたね。
  • 作ってる時にライブでやるって事を想定してないでしょ。→んー、でも、できるようにとは思ってるけど。大変だけど。今回それも実証されたし。まぁ、人数が必要だけどね。あと技術(腕って言ってたかなー?)も、か。今回、自分で作った曲をライブ用に譜面に起こしてて、「何だよ!」って思ったよ。もうねー、カチンとくる!1小節でコード5個は無いだろ!とか。でもねー、リハーサルとかで練習してたら、それが無くなって、もう1回自分に入ってきたって感じはあったね。
  • ライブをやるっていうのも意外だったんですけど→曲を作る時って視点がミクロで、ライブで演奏する時ってそれだけじゃダメで、こう会場のグルーブとかも入ってくるから視点をマクロに切り替える。もちろん、ミクロなのも必要なんだけど。何年か前まではミュージシャンとしてライブに参加する機会もあって、自分の中でその(ミクロ-マクロ)のバランスを取ってたんだけど、最近プロデュースとかアレンジの仕事が続いて、どうもミクロな方に傾いてる気がしたの。ま、これは後から考えた話なんだけど(笑)、実際そういう面もあった。最初は僕もライブでやるって考えてなかったんだけど、スタッフからライブやりませんかって話があった時に、山本さん(管)とか金原さん(弦)とかまたろうさん(打)が一緒にやってくれるんならいいよっていったのね。ドラマーの人はさ、いっぱいいるから後からでもなんとかなるか、と思って。でも、実際後から決めようとしたら、みんな忙しいから結構たいへんだったんだけど。歌も、最初決まってたのは畠山さんとキリンジとケミだけだったんだよ。だから、もしかしたら、その3組で他の人の歌も全部歌ってたかも。
  • もの凄い豪華なライブで、これをAXでやってどうする!って思いましたよ。武道館でもいいんじゃないかぐらいの感じじゃないですか。スタンディングなのに2部構成だし。→ライブの話が出た頃はアルバムを作ってて忙しかったから、「この人たちが出てくれるんならいいよ」とだけ返事して、ほっといたのね。その時点で会場のスケジュールだけ抑えて。「○○さんもでてくれることになりました」みたいな感じでどんどん決まってって、すごい豪華に。ライブ見たひとにAXって(ステージに)沢山のるんですねって言われた。
  • (客席のほうをむいて)や、もうこっちむいて喋っちゃうけど。僕、あんまりライブって詳しくなくて、何処(の会場)がどれぐらいの人数とかもよく知らないので、スタッフに任せてたんだけど、スタンディングで2部構成って普通しないんだね!ずっとたちっぱなしだったし、で、客席もけっこうギューギューだったよね?すみません。
  • 普通、間に休憩が入るのはみんな席があるから、トイレ行ったりできるんですよ。→うん、ほんとだよね。それで「休憩です」ってアナウンスのときに客席がざわざわしたのか、と。僕が行くライブ・・・っていうかコンサートは結構2部構成とか3部とかあって。今回は人数も多いし、いろんな人が入れ替わり立ち替わり歌うって感じだったから、2部に分けると構成つくりやすいなぁとおもって、スタッフに「2部で」って言ったんだけど。その時に「スタンディングで2部はちょっと・・・」とか言ってくれれば(笑)。でも、ゴメンね。チケット買えなかったひとも結構いたみたいで。
  • ライブのリハーサルは全部で8回やったんだけど、最初はドラムとベースとギターと僕の4人だけで、上ものいっさいナシで。僕がRhodes弾く曲だと4リズムになるんだけど、そうじゃないと・・・
  • 構成がギターバンドじゃないですか!ミッシェルみたい(笑)。→それで、『プラシーボ・セシボン』とかやると、全然違う。それはそれで良い。「お、意外にこっちのがいい?!」とはならなかったけど。で、上ものが入って、歌がないと雰囲気が分からないので、仮歌の人に入ってもらって。でも、仮歌のひとも、音域とかあるので男女二人ずつ呼んで。ゲストボーカルの人はみんなリハーサル1〜2時間だったんですよ。何回か歌ってもらって「大丈夫?」みたいな感じで。みなさん、さすがです。
  • 冨田さんの音楽が、「1曲が3曲」っていわれるような情報量の多さをめざすのは何故?→僕ね、みんなそうだと思ってたの。みんなそうやって、曲を組み立てて情報を盛り込んでっていうところを目指すもんで、まぁ、そうじゃない曲は、それが出来てないだけなのかと。でも、みんなそういうじゃないっていうことが最近分かりました。どうしてかって・・・、自分が聞く曲でも作りがシンプルなのって16小節が限度。打ち込みで作ってあるやつは。生は別だよ。すきなドラマーが演奏してるのだったら、ドラムだけ20分とかでも全然平気。
  • ライブのDVDが11月(15日)に発売になります。いまそのMIXをやってて、もうちょっとで終わります。(田中君とSHの所を見る。)
  • 今後の予定は?→またなんか作ろうと思って、準備はしてます。でも、アルバム年1枚とかは無理!ライブもまた・・・。今度はシンプルな構成で、とか。まぁ、何も決まってないですけど。
  • ずっとやりたいと思ってるんだけど、まだ実現できてないことってありますか?→うーん、アルバム1枚全部ジャズロック、とかね(笑)。今、急に言われたので適当に思いついただけですけど。